この記事では現役バーテンダーのゆうが、
ウイスキーの”樽”の違いを分かりやすく解説致します。
これを知るだけでウイスキーに対する知識がグッと深まりますので是非ご覧ください!
重要テーマですよ!
ウイスキーは樽に入れて熟成させる
ウイスキーは蒸留酒に分類され、穀物を原料として作られるスピリッツをオーク樽で熟成させて作られます。
使用する穀物が二条大麦(モルト)で単一の蒸留所で作られる物をシングルモルトと呼びます。
詳しく知りたい方はこちらをどうぞ↓
つまりウイスキー樽熟成をしないとウイスキーと呼べません!!
どの位熟成させるかは国によって違いますが、スコッチウイスキーの場合は、3年以上熟成させる事が義務化されています。
樽に入れる理由
ウイスキーの起源は諸説ありますが、12〜15世紀頃にアイルランドやスコットランドで飲まれていたそうです。
その時のウイスキーは樽熟成しておらず無色透明でした。
ではなぜ、樽熟成されるようになったのでしょうか?
それは、「不公平な税制がもたらした密造酒の製造」による物でした。
18世紀ごろのスコットランドはイングランドと併合されて、ウイスキーに対し、不公平な税制を課されるようになりました。
その時、ウイスキーの造りてはその税制から逃れる為に、渓谷などの見つかりにくい場所で「密造酒」を作り始めました。
その時、ウイスキーの隠し場所として樽を始めて使用したんです!
スコットランドにはシェリーを飲んだ後のシェリー樽が沢山余っていたんです。
そして、ただ隠すために樽の中に入れていたウイスキーをいざ開けてみると琥珀色のまろやかで熟成したウイスキーが出てきたのです!
まさに偶然の産物と言えますね。
この樽に入れて熟成させるという工程は、不公平な税制が撤廃されてウイスキーが政府公認となってもなお続き、
「ウイスキーは樽熟成させる」という事が不可欠になったのです。
樽の違いによるウイスキーに与える影響
では、樽の違いはウイスキーにどのような影響を与えるのでしょうか?
樽には様々な種類があります。
その種類とは大きく分けて
- 素材
- 大きさ
- 製法
- 何のお酒を入れたか樽か
に分かれます。
1・素材
樽の素材は様々です。順番にみていきましょう。
アメリカンホワイトオーク
アメリカンホワイトオークは、アメリカの北側に広くあるブナ科の広葉樹です。
加工がしやすく耐久性もある事で樽材に非常に適しています。
バニラやシナモンなどの甘みが特徴となっております。
スパニッシュオーク
スパニッシュオークは主にスペイン北部のガリシア地方で伐採される木材です。
スパニッシュオークは濃い赤褐色で、タンニン分も多く含まれており、ウイスキーにスパイシーで深い味わいをもたらします。
しかし現在、スパニッシュオーク材が少なくなってきています。
サントリー社もこのスパニッシュオークを好んで使用しています。
フレンチオーク
フレンチオークはヨーロッパナラの木の材木です。
非常に高価な材木として知られ、高級ワインの樽熟成に使用される事が多いです。
複雑かつきめ細やかな味わいをもたらす事が特徴です。
ミズナラ
ミズナラは日本原産のブナ科コナラ属の落葉広葉樹です。
一般的にどんぐりの木として知られています。
ミズナラは、実は加工がとても難しく、なおかつ新樽は木の香りがとても強くウイスキーの熟成には適していないと思われていました。
しかし、ミズナラは繰り返し使われる事で、白檀(ビャクダン)や伽羅(キャラ)を思わせる、独特の香りを放つようになったのです。
この独特なスパイシーな香りは、ジャパニーズウイスキーの大きな一つの特徴となり、ミズナラ樽の原酒はとても評価の高い物となったのです。
2・大きさ
ウイスキーを熟成させる樽のサイズは主に4種類です。
それぞれこちら↓
名称 | 容量 | 概要 |
バレル (barrel) | 180~200リットル | フランス語の「樽」barilを起源にもつ。アメリカでホワイトオークを材料に、バーボン、カナディアンのための樽としてつくられ、スコッチ、ジャパニーズの再使用樽として用いられる。 |
ホグスヘッド(hogshead) | 250リットル | 語源はおよそ豚一頭の重さであることから。バーボンバレルを解体、組み直して作られる寸胴な樽。 |
パンチョン(puncheon) | 500リットル | 300リットル強~500リットル強と、サイズはまちまち。日本ではサントリー社がウイスキー熟成用に作っている。材は北米産のホワイトオークが主。 |
バット(butt) | 500リットル | 大きい樽を意味するラテン語が語源。シェリーの熟成に一般に使われるサイズ。後述する特殊樽の基準になるサイズ。(クオーターなら、バットの4分の1のサイズ、つまり125リットルほどになる。) |
3・製法
柾目取り・板目取り
樽を作る際に材木をどういう手法で取り出すかによってウイスキーに与える影響が変わってきます。
木材を断面的に見て、上の画像の様に放射線上に切り出す方法を柾目取り、水平線上に切り出す方法を板目取りと言います。
「柾目板」は、1本の丸太から切り出せる量が「板目板」よりも非常に少ないため、貴重で非常に高価な材となっています。
「柾目板」は「板目板」と比較して収縮や膨潤が小さく、反りや狂いが比較的おきにくいことから漏れにくいです。
長期の熟成に耐える強度を求められるウイスキー樽には、主に頑強なオーク材の「柾目板」が使用されています。
チャー
バーボンの場合、アメリカンホワイトオークの新樽を使用する事が義務化されています。
その時、樽の内側を焦がす作業(チャー)をしないといけません。
樽材を焦がす事によってヴァニリンという成分が生成され、名前の通りバニラのような香りが付きます。
この焦がす具合の強弱によってウイスキーに与える影響が変わって来るという訳です。
4・何が入っていたか
スコッチやジャパニーズで特に意識されるのがこの、「樽に何が入っていたか」です。
スコッチやジャパニーズでは、バーボンの様に新樽を使う事は出来ません。
何かが入っていた、いわゆる「お古」を使用する事が義務化されています。
どんな種類があるのかそれぞれ解説します。
・バーボンカスク
バーボンカスクは名前の通り、バーボンが入っていた樽です。
基本的には一度組みなおされて、ホグズヘッドとなって使用されます。
バニラやシナモンなどの甘い香りが特徴です。
・シェリーカスク
シェリーカスクはシェリーが入っていた樽です。
シェリーはスペインのアンダルシアのワインで、辛口から極甘口まで実に多岐にわたります。
基本的にシェリーの味わいとしては、ドライフルーツやナッツ類の様な濃厚な味わいが特徴となっております。
・ワインカスク
ワインカスクは、名前の通りワインが入っていた樽です。
ベリー系の味わいやスパイシーな味わいが特徴です。
・ラムカスク
ラムカスクは名前の通りです。
ラムはサトウキビが原材料の蒸留酒です。
濃厚な甘さや、南国系のフルーツの味わいが特徴です。
・ビールカスク
ビールも樽熟成させるものもあります。
スタウトと呼ばれる様な黒ビールなどがあてはまります。
ブラックペッパーなどのスパイスの味わいやビターな苦味が特徴となっております。
・その他のカスク
その他、様々なカスクがあります。
例えば、甘口ワインのソーテルヌカスク、ポートワインカスク。
コニャックカスクやカルヴァドスカスク。
そんな物まで!!?って驚く様な物も沢山あります。
珍しい樽で熟成させた物を楽しむのも、ウイスキーを楽しむ醍醐味でと言えるでしょう!
樽の個性を感じやすい銘柄
最後にちょっとだけ樽の個性を感じやすい物をご紹介します!
1・グレンモーレンジ 10年
グレンモーレンジの10年は、バーボンカスクでバニラやシナモンなどの甘みがあります。
スモーキーなフレーバーが全く無いので、バーボンカスク由来の味わいをしっかりと感じれるでしょう。
2・マッカラン 12年 シェリーカスク
マッカランはウイスキーのロールスロイスと呼ばれ、世界中のウイスキーファンに愛されています。
中でもマッカランはシェリー樽の評価がとても高く、品質の良いシェリーカスクのウイスキーを生み出しています。
日々値段が上がり続けるこのマッカラン。
それほど、飲み人を魅力するウイスキーでしょう。
3・シーバスリーガル ミズナラ
シーバスリーガルのミズナラは日本限定リリースの商品です。
フィニッシュに希少なミズナラを使用しており、スパイシーなニュアンスが加わっております。
ミズナラの長期熟成のウイスキーはとても希少かつ高価なので、気軽に楽しめる範囲ではこのシーバスリーガルでしょう。