この記事では現役のバーテンダーゆうがシングルモルトについて解説致します。
1・シングルモルトとは?
結論から、シングルモルトについての定義を言いますと、
「一つの蒸留所で作られた”モルトウイスキー”だけ使って、瓶詰めされて作られたもの」
です。
でもこれだけでは、分からないですよね。詳しく分けて解説致します。
モルトウイスキーとは?
ウイスキーの原料は大きく分けると、モルトとグレーンに分かれます。
モルトとは英語で”大麦麦芽”の意味で、このモルトのみで作られたウイスキーが”モルトウイスキー”なんです。
一方で、グレーンは、トウモロコシやライ麦、小麦などの穀物の総称の事を言い、それらのグレーンのみで作られたウイスキーを”グレーンウイスキー”と呼びます。
モルトウイスキーは、蒸留所ごとに個性のある味わい(ラウドスピリッツ)。
一方、グレーンウイスキーはスッキリとした無個性な味わいになります(サイレントスピリッツ)。
蒸留所とは?
蒸留所とは、ザックリ言うとウイスキーを作る場所です。
ウイスキーの製造には、様々な工程があり、その全てがほとんどの場合この蒸留所で行われます。
日本の代表的な蒸留所は、
サントリーの所有する京都の大山崎にある山崎と山梨の白州、
ニッカウヰスキーの所有する北海道の余市、仙台の宮城狭、
イチローズモルトの所有する埼玉の秩父、キリンが所有する、静岡の富士御殿場などがあり、現在も全国各地で蒸留所が増えています。
蒸留所での製造工程
工程は乾燥、糖化、発酵、蒸留、熟成、瓶詰めに分かれます。
乾燥
麦芽を乾燥させる工程ですが、乾燥させる前に麦芽を発芽させて麦芽の持つ消化酵素を活性化させる必要があり、いい具合に活性したら加熱して乾燥させるのです。
この消化酵素があとに生きてきます。
モルトスターの存在
モルトスター(製麦業者)は麦芽を蒸留所に販売する業者のこと。
昔は、蒸留所内でフロアモルティングなどで乾燥させていたが、近年はモルトスターから麦芽を仕入れる蒸留所が殆ど。
糖化
その乾燥麦芽を潰して(マッシュ)、温水の仕込み水を入れ糖化酵素によって糖化させて麦汁を作るのです。
この麦汁が甘くないとアルコールを生成出来ないのでウイスキーにはなりません。
アルコールの生成について
アルコールの生成には糖分を必要とします。
C₆H₁₂O₆(グルコース)→
2C₂H₅OH(エタノール)+2CO₂(二酸化炭素)
糖分(グルコース)がエタノールと二酸化炭素に発酵します。
エタノールを生成するために十分な糖分が必要なのです。
発酵
作られた麦汁の糖分をアルコールと二酸化炭素に分解する作業。
この作業で麦汁のアルコール度数が16~18%程度になります。
蒸留
アルコール発酵した麦汁を蒸留器で蒸留しアルコール度数を高める工程。
蒸留することによってアルコール度数が、60~70%程度まで高まります。
因みに、モルトウイスキーには、単式蒸留器が使用され、グレーンウイスキーには、連続式蒸留機が使用されます。
単式蒸留器は、コクのある味わいになり、連続式蒸留機は、澄んでクリアな味わいとなるんです。
熟成
ウイスキーを樽に詰めて熟成させる工程。
この熟成には、非常に長い時間を有する工程で、ウイスキーの製造の99%はこの熟成の工程に費やす。
この工程により無色透明のお酒が琥珀色に輝く美酒へと生まれ変わるのです。
瓶詰め
色々な樽内で熟成させたウイスキーを出して混ざ合わせ(ブレンド)、加水してアルコール度数を40%程度にして瓶詰めするのです。
ウイスキーは、樽によって味わいがまるで違います。なのでその味を均一化させて、良い特徴を引き出させるのです。
以上が、蒸留所での工程です。
まとめ
シングルモルトとは、一つの蒸留所でこれらの作業を全て行い、原料はモルトのみを使用したウイスキーの事。
2・最大の魅力!蒸留所による個性の違いとは?
それは、蒸留所による個性の違いにあります。
では、どういった所で違いが生じるのでしょうか?分けて解説して行きます。
蒸留器による違い
蒸留所にて蒸留を行う際、上の写真のような銅製の蒸留器(ポットスチル)を使用します。
このポットスチルは一つとして同じ形の物は無く、このポットスチルによって蒸留されたスピリッツは、まったく違った物になるんです。
樽による違い
次に挙げられるのが、樽による違いです。
先程ウイスキーの製造工程の99%は熟成と申し上げましたが、その熟成する為の樽によって味わいがまるで変わります。
よく使われる樽の種類を挙げますと、バーボン樽、シェリー樽、ミズナラ樽など。
近年では、ビール樽やラム樽など珍しい樽を実験的に使用している蒸留所も増えています。
熟成場所による違い
次に挙げられるのが、熟成場所による違いです。
熟成の際によく言われるのが、”樽は呼吸している”と言う事です。
樽は外気の影響を強く受けます。例えば、ホコリ臭い所で熟成すればその臭いがウイスキーの香りの一部となってしまいます。
また、森の中の澄んだ空気の中では、森の爽やかな香りがウイスキーに移りますし、海岸沿いで熟成すれば潮風の影響で塩味にあるウイスキーとなります。
私たちも、空気の違いは肌で感じるように、ウイスキーにとっても空気、環境は重要なのです。
ブレンダーによる違い
次に挙げられますのが、ブレンダーによる違いです。
ウイスキーは同じ環境で熟成されたものでも味わいは全く違います。それらの味を整えて一定の味で瓶詰めするのが、ブレンダーの役割です。
ブレンダーの中には、マスターブレンダーと呼ばれる人々がいて、その方がウイスキーのブレンドの配合を決めるのです。
ウイスキーのボトルデザインが変わったら?
ウイスキーのボトルの見た目がリニューアルされる時がたまにあるのですが、その時は、配合の仕方が変わったか、マスターブレンダーが変わったかだと言われています。
見た目が変わると、味わいも変わるんですね。
以上が、違いが生じる理由です。
3・代表的なスコッチウイスキーの銘柄
次にシングルモルトが世界で最も作られているスコットランド(スコッチ)のシングルモルトについてご紹介します。どれもシングルモルトを語る上で欠かせないとなっております。
1・ザ・グレンリベット
こちらは、スコッチの中でも最も有名なウイスキーのひとつです。
このグレンリベットに記された1824年という年は、スコッチにとって記念すべき年です。
ジョージ・スミスがオーナーのグレンリベット蒸留所は、国内で初めて1824年に政府公認の蒸留所として認められました。
それまで密造酒ウイスキーが多く出回っていたスコットランドでは、ウイスキー正式に認められたので、記念の年なんですね。
ですが、グレンリベットだけが政府に認められた事に便乗した他の蒸留所が、グレンリベットの名前を許可無く使い始めたのです。
なのでグレンリベットは、最初に“The”という文字を入れる事によって他との差別化をはかり、現在でもザ・グレンリベットという名前が使われているんです。
味わいですが、最近バーボン樽で熟成が比率で多いので、ハチミツのような甘さとフルーティーさを持った非常に飲みやすいウイスキーとなっております。
2・グレンフィディック
こちらも非常に人気のウイスキーで、シングルモルトの中で一番売れているのがグレンフィディックです。因みにグレンとはゲール語で谷や渓谷の事で、スコッチによく見られる言葉です。グレンフィディックの場合は、”鹿の谷”と言う意味になります。
味わいは、リベットと同じくバーボン樽が主体なので、フルーティーな味わいが特徴で特に青りんごの香りが特徴となっております。
3・ザ・マッカラン
マッカランを知る方は多いはず。マッカランは”ウイスキーのロールスロイス”と称されるものです。
メインのマッカラン12年の樽は、シェリー樽を使用しており、高級感のある濃厚でイチジクのような味わいを感じさせます。
アッパーな方々に非常に人気のウイスキーで、現在でも価格が上がってきているウイスキーです。
4・ラフロイグ
こちらはスコットランドの中でもアイラ島で作られるウイスキーです。アイラ島のウイスキーの特徴は、麦芽を乾燥させる際にピート(泥炭)を使用するのが特徴であり、ピートを使用するすると、麦芽にその香りが移り、出来上がるウイスキーは、スモーキーで癖のある味わいになります。そんな中でも人気の一つがこのラフロイグです。
ラフロイグは、クレゾールのような化学薬品のような香りが特徴で、癖があるのですが、ハマる人はハマる、通好みのウイスキーです。
ラフロイグは英国王室御用達のウイスキーで、ロイヤルファミリーもこのラフロイグを愛飲しています。
以上がシングルモルトの私のオススメです。他にもご紹介したいウイスキーは沢山あるのですが、それはまた後日にご紹介致します。
4・まとめ
今日も最後まで読んで頂いてありがとうございました!
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